【2026年版】建設業許可は事業承継・M&Aで引き継げる?法人化・相続・事業譲渡の注意点を解説
建設業界では経営者の高齢化が進み、「そろそろ息子に会社を任せたい」「M&Aで事業を引き継ぎたい」という相談が年々増えています。一方で、建設業会社の事業承継では、建設業許可をどうするかが大きな問題になります。
令和2年(2020年)10月1日に建設業法が改正され、「建設業事業承継等認可制度」が創設され、一定の条件を満たせば建設業許可を承継できるようになりました。従来のような「廃業届+新規許可」の手続きによる許可の空白期間を避けられるようになりました。
この記事のポイントは、次のとおりです。
建設業会社の事業承継・M&Aでは、「建設業許可を切れ目なく引き継げるか」が重要なポイントです。
「建設業事業承継等認可制度」を利用すれば、一定の条件を満たすことで建設業許可を承継できます。
対象となるのは、事業譲渡、合併、会社分割、個人事業の相続、個人事業の法人化などのケースです。
ただし、承継後も経営業務の管理体制や営業所技術者等など、建設業許可の要件を満たしている必要があります。
自社で制度を利用できるかどうかは、承継方法や許可要件、申請のタイミングによって変わるため、早めの確認が重要です。
今回は、建設業会社の事業承継・M&Aにおける建設業許可の承継制度について、建設業許可を専門とする行政書士がわかりやすく解説します。
1. 建設業許可は事業承継・M&Aで引き継げる?
結論からいうと、一定の要件を満たせば、建設業許可を引き継ぐことができます。
対象となるのは次のようなケースです。
| ケース | 建設業許可の承継 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 事業譲渡 | 可能 | 事業承継前に事前の認可を受けること |
| 合併 | 可能 | 合併前に事前の認可を受けること |
| 会社分割 | 可能 | 会社分割前に事前の認可を受けること |
| 個人事業の相続 | 可能 | 死亡後30日以内に相続の認可を受けること |
| 個人事業の法人化 | 可能 | 法人設立前に事前の認可を受けていること |
| 株式譲渡 | 可能 | 認可は不要 但し、変更に応じて変更届を提出すること |
これらの場合に、あらかじめ認可を受けることで、建設業者としての地位を承継できます。
つまり、会社は変わっても、建設業許可を継続できる制度です。
弊社の関与先の建設業会社には家族経営の会社が多くあります。 「社長はお父様、経理はお母様、ご子息様が現場監督」 このような会社は決して珍しくありません。社長が、「息子は昔から手先が器用でね。やっぱり血は争えないよ。」と嬉しそうに話してくださることがあります。こうしたお話を聞くと、私たちもぜひ円滑に事業承継していただきたいと思います。
しかし現実には、家族経営だからこそ人員に余裕がなく、建設業許可の人的要件を満たせなくなるというケースも少なくありません。
だからこそ、事業承継は数年前から準備を始めることが重要となります。
2. 建設業事業承継等認可制度とは
令和2年10月以前は、建設業会社を承継する場合は「廃業届+新規許可申請」という流れしかありませんでした。このやりかたでは、廃業日から新しい許可日まで許可が存在しない期間が発生してしまいます。そのため、この空白期間中は、公共工事への参加できなくなる、許可が必要な工事の受注ができなくなるといった問題が生じていました。そこで創設されたのが、建設業事業承継等認可制度です。現在では、認可を受けることで許可を切れ目なく承継できるようになりました。
3. 建設業許可を承継するために満たすべき要件
認可制度を利用するには、承継後も建設業許可の要件を満たすことが大前提になります。
以下、幾つかの重要な建設業の要件を取り上げながらご説明します。
(1)経営業務の管理を適正に行う能力
いわゆる経営業務の管理責任者です。これに就任できる要件は幾つか種類がありますが、最も一般的なのは、「建設業許可会社で5年以上の常勤役員経験」による要件です。そのため、後継者を直前になって役員にするのでは遅い場合があります。
事業承継を見据えて、数年前から役員として経験を積ませることが大切です。
経営業務の管理責任者の詳しい要件については、こちらの記事で解説しています。
関連記事:【2026年対応】建設業許可の「経営業務管理責任者(経管)」要件とは?|起業時に最もつまずくポイントを行政書士が解説
(2)営業所技術者等(旧:専任技術者)
営業所技術者等の要件も承継後に満たしていなければなりません。
例えば、現社長だけが資格を持っている会社では、現社長の引退と同時に要件を満たせなくなる可能性があります。資格者の育成も計画的に行いましょう。
(3)誠実性・欠格要件
建設業法違反などがあると、認可を受けられない場合があります。
また、後継者が役員になる場合も、役員の欠格要件に該当しないことが必要です。
(4)営業所
承継と同時に営業所を移転するケースもあります。その場合、移転先が建設業法上の営業所要件を満たしている必要があります。住所だけを移せばよいというものではありません。
4. 認可申請は「事前申請」が絶対条件し
この制度で最も重要なのは、認可申請は承継日前に行わなければならないという点です。
承継後に申請しても認可制度は利用できません。
また、認可後にも提出しなければならない書類があります。
例えば、埼玉県知事許可では、相続以外の承継は承継の事実発生日の30日前までに申請を完了させる必要があります(*1)。
一方、国土交通大臣許可では、承継予定日の90日前までの申請受付が案内されています(*2)。
必要書類や提出期限は都道府県によって運用が異なることもあるため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
5. 許可番号はどうなる?
許可番号については次のようになります。
<建設業許可会社 → 無許可会社>従前の許可番号を引き継ぐことができます。
<許可会社同士の承継>どちらの許可番号を引き継ぐか選択できます。
長年使用している許可番号は、取引先からの信用にもつながるため、そのまま使えるメリットは小さくありません。
6. 建設業許可を承継できないケース
実は、すべてのケースで承継できるわけではありません。
例えば、ある業種について
A社が一般建設業
B社が特定建設業
というように、同一業種で一般・特定が重複する場合は、そのまま承継できないケースがあります。
このような場合には、承継日前に一部廃業届の提出が必要になることがあります。
また、事業譲渡・合併・会社分割による承継では、被承継会社が受けた監督処分や経営事項審査(経審)の結果なども承継されます。「良い部分だけを引き継ぐ」ことはできません。
M&Aではデューデリジェンス(事前調査)が重要になる理由の一つです。
7. 事業承継・M&A前のチェックリスト
事業承継を検討している場合は、次の項目を確認しましょう。
□ 許可要件の確認
□ 承継後も建設業許可の要件を満たせる
□ 経営業務の管理を適正に行う体制がある
□ 営業所技術者等を確保している
□ 社会保険に適正加入している
□ 営業所の要件を満たしている
□ 欠格要件に該当する役員がいない
□ スケジュールの確認
□ 承継日・M&A実行日を決めた
□事前認可の申請締切日を確認した
□ 認可申請を事前に行う
□ 認可後の提出書類も確認した
□ 許可業種の確認
□ 一般・特定の重複がないか確認した
□ 必要に応じて一部廃業届を検討した
□ M&Aの場合
□ 監督処分の有無を確認した
□ 経営事項審査の状況を確認した
□ 行政処分歴を確認した
8. よくある質問
Q.相続でも利用できますか?
はい。個人事業の相続も認可制度の対象です。
Q.個人事業から法人化した場合も許可番号は変わりませんか?
認可制度を利用すると、許可番号を引き継げます。
Q.必ず認可制度を使わなければなりませんか?
いいえ。従来どおり、廃業届を提出して新規許可を取得する方法も可能です。
ただし、その場合は許可の空白期間が生じる可能性があるため、工事の受注や営業活動への影響を十分に検討する必要があります。
9. まとめ|許可の空白期間を防ぐには早めの確認が重要
建設業会社の事業承継では、会社そのものだけでなく、建設業許可を円滑に承継できるかが重要なポイントになります。
現在は認可制度の活用により、許可の空白期間を生じさせることなく承継できるケースが増えました。しかし、この制度は事前認可であること、そして承継後も建設業許可の要件を満たす体制が整っていることが前提です。
特に家族経営の建設会社では、「社長が引退すると要件を満たす人がいなくなる」という事態も少なくありません。後継者の役員経験や資格取得など、数年先を見据えた準備が円滑な事業承継につながります。
建設業の事業承継・M&Aは行政書士法人へご相談ください
事業承継では、建設業法だけでなく、会社法や法人登記、契約関係など複数の手続きが関係します。手続きの時期を誤ると、認可制度を利用できず、許可の空白期間が生じるおそれもあります。
当行政書士法人では、
建設業事業承継認可申請
建設業許可の維持・更新
M&Aに伴う建設業許可の承継相談
法人成り・事業譲渡に関する各種許認可手続き
まで一貫してサポートしております。建設業の事業承継をご検討中の方は、お早めにお気軽にご相談ください。
※本記事は、2026年7月時点の情報をもとに作成しています。建設業許可の承継認可に関する申請期限・必要書類・運用は、許可行政庁により異なる場合があります。実際に手続きを進める際は、最新の公的資料をご確認ください。
*1:「12 許可の承継 - 埼玉県」
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/44992/011_12_202604.pdf
*2:「事業承継等の事前認可制度-関東地方整備局」
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000877209.pdf
著者プロフィール
著者:木村 亜矢(行政書士)
行政書士法人LexArrow代表。法政大学法学部卒業後、一橋大学大学院法学研究科を修了。建設業許可申請、宗教法人関連手続き、外国人雇用・在留資格(ビザ)申請など幅広い分野をサポートし、全国建行協や所沢商工会議所に所属。埼玉県所沢市を拠点に、地域と企業の発展を支える行政書士として活動中。→ 事務所概要はこちら
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