育成就労制度は2027年4月1日開始|外国人受入企業が2026年秋から準備すべきこと
2027年4月1日から、現在の技能実習制度に代わる「育成就労制度」が始まります。
育成就労制度は、単に技能実習制度の名称が変わるだけの制度ではありません。外国人を「育成しながら人材として確保する」ことを目的とし、特定技能制度への移行も見据えた新しい外国人材受入れ制度です。
現在、外国人を雇用している企業はもちろん、これから外国人材の採用を検討している企業も、2027年4月を待ってから準備を始めるのでは遅い可能性 があります。
なぜなら、2026年9月1日から、育成就労計画の認定について施行日前申請が始まるからです。つまり、2026年秋は企業にとって、具体的な準備を始める重要なタイミングといえます。
本記事では、外国人材をすでに受け入れている企業や、これから受け入れようとしている企業が、2026年秋から何を準備すべきなのかを解説します。
この記事の結論|2026年秋から確認しておきたいこと
育成就労制度について、まず押さえておきたいポイントは次のとおりです。
l 育成就労制度の開始日は2027年4月1日
l 育成就労計画の施行日前申請は2026年9月1日から開始
l 2026年9月1日から始まるのは「申請」であり、実際に育成就労外国人を受け入れられるのは2027年4月1日以降(*1)
受入企業は、自社の対象分野・業務、受入要件、分野別基準、採用時期、育成・日本語教育体制などを制度開始前から確認しておく必要がある
1.外国人受入企業は2026年秋から準備を始めるべき
<2026年秋から準備すべき理由>
育成就労制度の正式な開始は2027年4月1日です。しかし、制度開始日に外国人材の受入れをスタートさせるためには、その前から受入れ体制を整えておく必要があります。
育成就労制度では、外国人ごとに「育成就労計画」を作成し、その認定を受けることが必要になります。また、監理支援機関を利用する場合には、どの機関と連携するのかについても事前に検討しなければなりません。
さらに、2026年9月1日から育成就労計画の施行日前申請が始まります。
そのため、2026年秋は「制度について勉強する時期」から「自社が実際に利用できるかを確認し、具体的な準備を始める時期」へ移行するタイミングと考えるとよいでしょう。
<企業が最初に確認すべき項目>
まずは、次の点を確認してください。
□ 自社の事業が育成就労の対象分野に該当するか
□ 外国人に担当させる業務が対象業務に該当するか
□ 受入れ人数の上限に問題がないか
□ 自社が育成就労実施者としての要件を満たせるか
□ 必要な人材育成・支援体制を整えられるか
□ 監理支援機関をどこにするか
□ 外国人材の採用時期をいつにするか
□ 育成就労終了後に特定技能へ移行させるのか
特に重要なのが、「自社の業種なら外国人を受け入れられる」とだけ考えないことです。育成就労制度では、分野ごとに対象となる業務や追加的な基準が定められているため、自社の事業内容と実際に外国人が従事する業務の両方を確認する必要があります。
育成就労制度とは
育成就労制度は、技能実習制度を発展的に解消して創設される制度です。
その目的は、外国人材を一定期間、日本で就労させながら技能を修得してもらい、特定技能1号の水準の人材を育成するとともに、日本国内の人手不足分野における人材を確保することにあります。
育成就労の期間は原則として3年以内で、外国人ごとに育成就労計画を作成し、認定を受ける仕組みとなっています。また、技能実習制度と異なり、一定の要件の下で本人の意向による転籍が認められるなど、外国人労働者の権利保護も重視されています。
育成就労制度の仕組みや受入れ要件、技能実習制度からの主な変更点については、「【2026年版】育成就労制度とは?企業が押さえるべき受入れ要件と実務ポイント 」で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
3.育成就労制度の影響を受ける企業
育成就労制度の影響を受けるのは、現在技能実習生を受け入れている企業だけではありません。今後、外国人材の採用を検討している企業も対象となります。
育成就労制度では、次の17分野が育成就労産業分野として設定されています。
介護、ビルクリーニング、リネンサプライ、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、宿泊、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業、資源循環です。
一方、航空や自動車運送業など、特定技能のみが対象となる分野もあります。
したがって、「外国人を採用したい」という希望だけで制度を選択するのではなく、まず自社の業種・業務がどの制度の対象になるのかを確認することが重要です。
外国人受入企業が2026年秋から準備すべき5つのこと
では、具体的に何を準備すればよいのでしょうか。
① 自社の対象分野・業務を確認する
最初に確認したいのが、自社の業種と外国人に担当させる業務です。
育成就労制度では、分野ごとに受入れ可能な業務が定められています。「製造業だから大丈夫」「建設業だから大丈夫」という判断ではなく、実際の業務内容まで確認しましょう。
② 受入れ企業としての要件を確認する
育成就労実施者には、一定の受入れ体制や法令遵守などが求められます。
例えば、労働・社会保険・租税関係法令を遵守していること、一定の支援・育成体制を整えていることなどが必要です。また、過去1年以内の外国人の行方不明や、一定の場合の労働者の離職などについても要件が設けられています。
したがって、制度開始直前に慌てて確認するのではなく、2026年秋の段階で自社の労務管理や社会保険、税務などを点検しておくことをおすすめします。
③ 監理支援機関を選ぶ
育成就労制度では「監理支援機関」が重要な役割を担います。
外国人材の募集・受入れから育成、支援までをどのような体制で行うのかを早めに決める必要があります。
現在の監理団体を利用している企業についても、「これまでの監理団体がそのまま利用できる」とは限りません。技能実習制度の監理団体も、育成就労制度で監理支援事業を行うためには、監理支援機関としての許可を受ける必要があります。
④ 外国人材の採用計画を見直す
「いつ、何人採用するのか」も早めに検討しましょう。
育成就労制度では、分野ごとに受入れ見込数が設定され、それが受入れ上限として運用されます。2029年3月末までの受入れ見込数は、育成就労42万6,200人、特定技能1号80万5,700人とされています。
採用したい時期が決まっている企業ほど、早めに制度と採用スケジュールをすり合わせておくことが重要です。
⑤ 特定技能への移行まで考える
育成就労は「3年間働いて終わり」という制度ではありません。
育成就労制度は、特定技能1号の水準の技能を持つ人材を育成することが制度目的の一つです。そのため、外国人材を採用する企業は、採用時点から「3年後にどうするのか」を考えておくことが重要です。
「長く働いてもらいたい」という企業であれば、育成就労から特定技能への移行を前提として、人材育成やキャリア設計を考えておくとよいでしょう。
5.育成就労と特定技能はどちらを選ぶべきか5
外国人材の受入れを検討する企業は、「育成就労と特定技能のどちらを選べばいいですか?」という疑問をお持ちかもしれません。
大まかにいえば、外国人材を採用して「育成する」ことを前提とする場合には育成就労、既に一定の技能・日本語能力を持つ人材を即戦力として受け入れたい場合には特定技能が選択肢となります。
ただし、実際には業種、外国人本人の技能・日本語能力、採用ルート、企業の育成体制などによって適切な制度は変わります。
詳しくは「【2026年版】育成就労と特定技能の違いとは?|企業はどちらを選ぶべきか徹底比較」で解説していますので、制度選択で迷っている企業はあわせてご参照ください。
6.業種ごとに異なる「上乗せ基準」に注意
育成就労制度を検討する際、特に注意したいのが「上乗せ基準」です。
育成就労制度には、すべての分野に共通する受入れ機関の基準に加えて、分野の特性に応じた独自の基準が設けられる場合があります。
例えば、一定の分野では事業者の許認可、業界団体への加入、受入れ人数、労働条件、安全衛生、人材育成、日本語能力などについて、追加の要件が設定されています。つまり、「育成就労の一般的な要件を満たしているから受け入れられる」とは限りません。自社の業種について、どのような上乗せ基準が設けられているのかを確認することが重要です。特に建設業など、もともと外国人材の受入れに関して独自の制度・要件がある分野では、制度開始前に最新情報を確認しておく必要があります。
7.育成就労制度に関するよくある質問
Q1.技能実習制度は2027年4月1日ですべて終了 するのですか?
いいえ。
2027年4月1日から育成就労制度が始まり、技能実習制度は発展的に解消されます。ただし、制度開始日に現在の技能実習生が一斉に在留できなくなるわけではありません。一定の経過措置が設けられているため、現在技能実習を行っている外国人については、個別の在留状況や技能実習計画などを確認する必要があります。
「2027年4月になったら現在の技能実習生をすぐに帰国させなければならない」という意味ではありません。
Q2.特定技能から育成就労へ変更できますか?
育成就労制度は、特定技能制度へのステップアップを前提とする制度です。そのため、既に1号特定技能外国人としてその通算在留期間の上限まで在留しており、特定技能に移行する余地がない者などは、育成就労外国人へ変更することができません。
Q3.初めて外国人を採用する企業でも利用できますか?
はい。初めて外国人材を受け入れる企業であっても、要件を満たせば育成就労制度を利用できます。
ただし、外国人を受け入れるためには、育成・支援体制、雇用条件、社会保険・労働関係法令の遵守など、確認すべき事項が多くあります。
特に初めて外国人を雇用する企業の場合は、採用後の手続だけでなく、「自社がどの制度で、どのような人材を受け入れるのか」を採用前に整理することが重要です。
8.まとめ|2027年4月を待たず、2026年秋から準備を
育成就労制度の開始は2027年4月1日です。
しかし、企業にとって重要なのは「2027年4月になってから対応する」のではなく、その前から自社の受入れ体制を整えておくことです。
特に2026年9月1日から育成就労計画の施行日前申請が始まることを考えると、2026年秋は制度対応を具体的に進める重要な時期になります。
まずは、下記のポイントを確認してみましょう。
□ 自社が育成就労の対象分野に該当するか
□ 外国人に担当させる業務が対象となるか
□ 受入れ企業としての要件を満たしているか
□ 上乗せ基準に対応できるか
□ 監理支援機関をどうするか
□ 何人を、いつから採用するか
□ 育成就労終了後に特定技能へ移行するか
育成就労制度は、外国人材を「一時的に雇用する制度」として考えるのではなく、将来の人材確保まで含めて採用戦略を考えることがポイントです。
制度開始までの時間を有効に使い、2026年秋から計画的に準備を進めることで、2027年4月以降の外国人材の受入れをスムーズにスタートさせることができます。
「自社は育成就労と特定技能のどちらが向いているのか」「現在の技能実習生を今後どうすればよいのか」「自社は育成就労の受入れ要件を満たしているのか」など、企業ごとに確認すべきポイントは異なります。外国人材の受入れを検討している企業は、制度開始直前になって慌てることのないよう、2026年秋から準備を始めることをおすすめします。
LexArrowでは、外国人材の受入れを検討する企業に対し、在留資格や外国人雇用に関する手続だけでなく、企業ごとの状況に応じた受入れ方法についてもご相談を承っています。
育成就労制度への対応についてお悩みの企業様は、お気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年8月時点で公表されている情報をもとに作成しています。育成就労制度に関する運用要領や分野別の基準等は更新される場合がありますので、実際の申請・受入れにあたっては最新の公表情報をご確認ください。
【出典】
*1:「出入国在留管理庁」(育成就労制度Q&A https://www.moj.go.jp/isa/applications/faq/ikusei_qa_00002.html?lang=ja)
著者プロフィール
著者:木村 亜矢(行政書士)
行政書士法人LexArrow代表。法政大学法学部卒業後、一橋大学大学院法学研究科を修了。建設業許可申請、宗教法人関連手続き、外国人雇用・在留資格(ビザ)申請など幅広い分野をサポートし、全国建行協や所沢商工会議所に所属。埼玉県所沢市を拠点に、地域と企業の発展を支える行政書士として活動中。→ 事務所概要はこちら
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