外国人社員が突然退職・帰国したら?企業が取るべき対応とリスク管理

日本人/外国人を問わず、さまざまな理由で会社を退職することがあります。もっとも、外国人雇用の場合は、単なる退職だけではなく、「帰国」「転職」「失踪」といったケースが発生する点が特徴です。さらに、外国人本人が持つ在留資格によって必要な対応が異なるため(*1)、企業側にはより慎重な対応が求められます。

*1:関連記事「【外国人のビザ】外国人雇用の基礎知識:在留資格の種類と就労可能な業務内容」 

突然の退職や帰国が発生した際に適切な対応ができていないと、入管手続きの漏れや社会保険関係の未処理、住民税の未納など、後々トラブルにつながることもあります。今回は、外国人社員が退職・帰国する場合に企業が押さえておきたい基本的な対応と注意点を整理します。

 

【この記事で分かること】

·            外国人社員が退職・帰国した際に企業が行うべき手続き

·            転職・帰国時の注意点

·            特定技能・技能実習特有の対応

·            よくあるトラブルと防止策

を、雇用側の企業向けに分かりやすく整理します。

 

 


 

1 退職・帰国時に必要な対応

‍ ‍

(1)  会社が行うべき手続き

①外国人雇用状況の届出(ハローワーク)

外国人社員が退職した場合、会社はハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を行う必要があります。期限は、退職日の翌日から10日以内です。もっとも、雇用保険に加入している場合は、「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出することで、原則として外国人雇用状況の届出を兼ねることになります。

※外国人雇用状況の届出については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

【2026年版】ここを押さえておけば安心!外国人雇用における「届出・申請が必要/不要」の判断基準まとめ

②雇用保険・社会保険の喪失手続き

退職時には、社会保険関係の資格喪失手続きも必要です。

  • 雇用保険被保険者資格喪失届(ハローワーク):退職後10日以内

  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届(年金事務所):退職後5日以内

特に健康保険証は、退職日の翌日以降は使用できません。返却されないまま使用されると、後日トラブルになる可能性があるため、確実に回収する必要があります。

③離職票・源泉徴収票の交付

外国人社員が転職する場合や帰国する場合、離職票や源泉徴収票が必要になるケースが多くあります。特に在留資格の変更や更新許可申請の際、必須書類となります。失業給付の申請、転職先での手続き、帰国後の税務処理などに関係するため、できる限り速やかに交付することが望ましいです。

(2)外国人本人が行うべき手続き

外国人本人が行う必要のある手続きについても、企業側が案内してあげることが重要です。

①所属機関に関する届出(入管)

就労系の在留資格を持つ外国人が退職した場合、本人は出入国在留管理局へ「所属機関に関する届出」を行う必要があります。期限は、退職後14日以内です。窓口・郵送・オンラインで手続きが可能です。この届出を忘れてしまう外国人は少なくありません。しかし、届出義務違反は、将来の在留資格更新や変更申請に影響する可能性があります。

②帰国時の住民税・年金手続き

外国人が帰国する場合、住民税の処理も重要です。退職時に残額を一括徴収するか、あるいは「納税管理人」を定め、日本国内で代理納付してもらう必要があります。

また、厚生年金に6か月以上加入していた外国人は、帰国後に「脱退一時金」を請求できる可能性があります。請求は、日本を出国してから2年以内に行う必要があります。

外国人社員の退職・帰国時には、会社・本人それぞれに必要な手続きがあります。主な対応を一覧で整理すると、次のとおりです。

手続き 誰が行う? 提出先 期限 ポイント
外国人雇用状況の届出 会社 ハローワーク 退職翌日から10日以内 雇用保険資格喪失届で兼ねる場合あり
雇用保険被保険者資格喪失届 会社 ハローワーク 10日以内 離職票発行にも関係
健康保険・厚生年金資格喪失届 会社 年金事務所 5日以内 保険証回収を忘れずに
離職票・源泉徴収票の交付 会社 本人へ交付 速やかに 転職・帰国時に必要
所属機関に関する届出 外国人本人 入管 14日以内 オンライン提出可能
住民税の精算 本人・会社 市区町村 帰国前 一括徴収または納税管理人
脱退一時金の請求 外国人本人 年金機構 出国後2年以内 厚生年金6か月以上加入が条件

2 転職時の注意点

外国人が退職後も日本に残り、転職するケースは多くあります。

この場合、現在の在留資格のままで新しい仕事ができるのか(*2)、必ず確認する必要があります。

たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持っていても、単純労働中心の仕事へ転職することはできません。仕事内容が在留資格の活動範囲に合致しているかが重要になります。

また、退職後3か月以上、適切な活動をしていない場合、在留資格取消しの対象になる可能性があります。そのため、転職活動が長引く場合には注意が必要です。

*2:関連記事「【外国人のビザ】外国人雇用の基礎知識:在留資格の種類と就労可能な業務内容

 

3 外国人が帰国する場合の注意点

外国人が本国へ帰国する場合、「再入国許可」にも注意が必要です。

1年以内に日本へ戻る予定であれば、多くの場合「みなし再入国許可」で対応できます。一方、1年以上日本を離れる場合は、通常の再入国許可が必要になります。

また、在留期限が切れそうな状態で長期間出国すると、その後の在留資格申請に影響する可能性もあります。

企業としても、帰国予定の外国人に対し、在留期限や再入国制度について一度確認してあげると安心です。

 

4 技能実習・特定技能の場合の注意点

‍ ‍

(1)技能実習生の退職・帰国

技能実習生の場合、監理団体が中心となって対応を進めることになります。

退職・帰国スケジュールについては、実習実施者、監理団体、本人で協議して決定します。

そして、帰国費用については、原則として実習実施者側が負担します。

そのほかにも、在留カード返納、住民票の転出届、年金・社会保険の資格喪失手続きなどの実務対応が必要になります。

 

(2)特定技能外国人の退職・帰国

特定技能外国人の場合は、通常の外国人雇用以上に入管への届出が重要になります。

特に、「受入れ困難届出」「特定技能雇用契約終了届出」などを、退職理由に合わせて退職後14日以内に提出する必要があります。さらに、住民税・年金・銀行口座の整理など、生活面のサポートも必要になるケースがあります。

また、特定技能外国人が転職を希望する場合、退職後3か月以内に次の受入れ先を見つける必要があります。状況によっては、「特定活動」への変更が必要になることもあります。

※特定技能外国人の退職・帰国については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

【2025年最新版】特定技能で外国人を雇用するには?企業が知っておきたい申請から受け入れまでの流れ【行政書士が解説】

 

5 外国人社員の退職・帰国でよくある質問

Q1 外国人社員が突然来なくなりました。会社はどうすればよいですか?

まずは本人へ連絡を取り、状況確認を行ってください。

連絡が取れない場合でも、退職扱いにするかどうかは慎重に判断する必要があります。

また、外国人雇用状況の届出、社会保険の資格喪失手続きなど、必要な手続きは期限内に進める必要があります。

特定技能外国人や技能実習生の場合は、通常より厳格な届出義務があるため、監理団体・登録支援機関・行政書士などへ早めに相談することをおすすめします。

 

Q2 外国人が退職したあと、日本に滞在し続けることはできますか?

転職が認められている在留資格の場合は可能です。

ただし、在留資格に応じた活動を継続していることが前提になります。転職活動中であっても、長期間活動実態がない場合は、在留資格取消しの対象となる可能性があります。

また、転職先の仕事内容が現在の在留資格に合っているかも重要です。

 

Q3 外国人本人が入管へ届出をしなかった場合、会社が責任を負いますか?

原則として、「所属機関に関する届出」は外国人本人の義務です。

ただし、企業側が制度を理解しておらず、何も案内していなかった場合、外国人とのトラブルにつながるケースがあります。そのため、退職時には「入管への届出が必要であること」を説明しておくと安心です。

 

Q4 帰国した外国人の住民税が未納のままになりました。会社が払う必要がありますか?

原則として、納税義務は本人にあります。

もっとも、帰国前に住民税の精算を行わなかったことで、自治体から会社へ問い合わせが来るケースはあります。

退職・帰国予定がある場合は、退職時に一括徴収するか、納税管理人を設定するよう案内しておくとトラブル防止につながります。

 

Q5 外国人が退職後すぐに帰国する場合、在留カードはどうなりますか?

出国時に空港で返納するのが一般的です。

ただし、みなし再入国許可で再来日予定がある場合など、状況によって扱いが異なることがあります。

 

6 まとめ「突然の退職・帰国」に備えるために

外国人雇用では、採用時だけでなく「退職時対応」まで含めて制度設計しておくことが重要です。

 特に、

·            入管への届出漏れ

·            在留資格との不整合

·            住民税未納

·            社会保険未処理

·            特定技能・技能実習特有の届出漏れ

などは、企業リスクにつながる可能性があります。

 

「急に辞めてしまった」「突然帰国してしまった」というケースでも、初動を誤らなければ適切に対応できることは少なくありません。外国人雇用の退職対応やリスク管理について不安がある場合は、早めに専門家へご相談ください。制度理解と事前準備によって、企業側の負担やトラブルを大きく減らすことができます。

 

行政書士法人LexArrowでは、外国人雇用に関する各種手続きや企業側のリスク管理についてサポートしております。

「このケースでは何が必要なのか分からない」「届出漏れがないか不安」といった場合も、お気軽にご相談ください。

 

外国人雇用に関する基本制度や届出については、以下の記事でも詳しく解説しています。

【2026年版】育成就労と特定技能の違いとは?|企業はどちらを選ぶべきか徹底比較

 

著者プロフィール

著者:木村 亜矢(行政書士)
行政書士法人LexArrow代表。法政大学法学部卒業後、一橋大学大学院法学研究科を修了。建設業許可申請、宗教法人関連手続き、外国人雇用・在留資格(ビザ)申請など幅広い分野をサポートし、全国建行協や所沢商工会議所に所属。埼玉県所沢市を拠点に、地域と企業の発展を支える行政書士として活動中。→ 事務所概要はこちら


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